あなたがいない

あなたが いない
誰かが あなたを 思い浮かべるたびに
空には 雲が うまれている

あなたが いない
わたしは その席には 座れない
あなたが お気に入りで着ていた
ネイビーのジャケットが かかったままの その席は
もうすぐ みんなのもの になってしまうから

てにをは や あかさたな が
口のなかで どんどん たまっていく
そうして 伝えることを 忘れてしまう

あなたは いない
もらったメモは だいたい字が汚くて 読めなかった
マーカーペンで書くから よけいに わからなかった 
だけど 文字のかたちは はっきりと覚えている

空には 雲が 浮かんでいる
なんのかたちにも 見えなかった
どうして あなたは いないのだろう

12月 1月 2月 3月 4月

あなたは いない
誰かが あなたを 忘れるたびに
空には 雲が うまれている
いずれ すべては みんなのものになる
そのとき空は かんぜんに 青になる

zbm