セックス三部作(三作目はまだない)

最近のstereotype2085ことけいせいさんの性事情について書かれた二作を掲載。載せる適当な場がなかったのでこちらに。なにもないところに投稿するとMr.ukariの寸評が貰えるらしいぞ!笑

ってことで行ってみよう。

「内臓の奥まで」

捲れた内臓のもとまで届けるつもりだった

旋回するオレンジの電灯は酩酊に似た感覚に揺れる僕を照らしている
お腹を満たしたはずのフライドチキンの内側まで抉りながら
喉元に突き刺した、喉に突き立てたのはきっと獣めいた声をあげる天国
がんじがらめでベッドに磔にされたあと
別れ際に出されたアイデアは閃きというには余りに悲しくて
同意しにくい
散々引き留められて逃げるように部屋を出たけれど
残ったのは肉体、肌触りの余韻だけ
自分を責め立てることをしなくなった赤と黒
ギロチンに向かうソレルは善意を失った
善性を剥製に仕上げてこそ、ようやくにして絞り取られる命
SNSで流れる醜聞、youtuberが海外カジノで失った大金、明滅する演出を繰り広げるゲームアプリ。そして多分茫漠とした意識が、
そいつらが慌ただしくスクーターを走らせる家路の妙なざわつきを、
一掃する
もう好きじゃない女性との性はいつだって無情だ
届けるはずだった気持ちは元からカラカラ、空っぽだった
嫌気が差す僕を救うのはshort動画でのたまう三島だったり、あと

本当に嫌な手触りだ、本当に

「黒い粘膜」

タブーにもならないセックスのたびに
積みあげる嘘が多くなるならば
白紙には数字の羅列でも書き連ねていった方がいい
ヒダのある鼓膜に響くのは味気のないポップス
DVを働く父が煽るようなラップも
東京の戦地を這いつくばる戦車も
僕は見過してしまった、関係ないからね

甲「アイラヴユー陥落首都、僕は君を見失ってしまった」
乙「探しているのはガラス玉の切れたコンビニのトイレだ」
甲「限界も知らないクセに勝手にニヒルってんじゃねえよ」
乙「でも俺らは死ぬのも諦めたからね」
甲「アイラヴユーさようなら廃屋の首都、僕は君が大好きだった」

蝉の鳴き声はグレートブリテンではノイズでしかなくて
そこには情趣も儚さも、ましてや詩情なんてものもない
井戸の裏側でクレーターに舌を出したのは剥製になった蝉の、亡き骸

満員電車が走るこの狭い都市で
粘膜の傍で、粘膜に覆われて尽きるなら
そこに序破急があるような気がしてたんだよ
でも、
多分それは間違いだ、気まぐれに任せた判断だとしても多分、覆らない
カタツムリの殻の中心部、眼球がとどまるのは
なぜか悲しげな顔をした、太陽の黒点

終わりに

黒い粘膜の方がより切実でよきね。ではまた会おう。

1件のコメント

  1. けいせいさんこんにちは、せっかくご指名いただいたので寸評を残します
    とてもスピード違反な詩だと思いました。

    >>捲れた内臓のもとまで届けるつもりだった

    例えばのっけからこのフレーズなんですけど、この一文を読みほぐすためにgoogleで「内臓 捲れる」とか検索していたら腸捻転とか急を要しそうなワードが出てきて、あたふたしてしまいました。
    救急車呼ばなくていいのかな、と思っている僕を尻目に情事を始めるわけですから、とてもスピード違反な詩だと思います。有り余るスピードで、読者を置き去りにしてしまうことを目的とした記述ならそれは成功していると思います。
    一方で一つ一つの言葉や情景を相手に読み解かせたい場合どうしてもスピードが速すぎる気もします。思うに詩全体を通して「その場その時に存在したであろう固有のもの」がほとんど存在していないことに気づきます。
    例えば枕元の横に落ちている一本の縮れ毛なんかがそういうものです。SEXの最中その縮れ毛がどこの部位の毛なのか、あるいはSEXをする二人のどちらのものなのか、あるいはそもそも部屋のクリーニングが適切にされていなかったのか、ずっと気になってしまう。
    これはとても「遅い」やり方の一つですが、愛情の不足を表現するだけならこれで十分だったりしますね。

    「速い」のと「遅い」のどちらがより優れているか、というのは僕には分かりません。ただこの詩は読者にじっくりと読まれることを願っているような気がしてしまったので余計な口を挟んでしまいました、どうかご容赦ください。

    それでは良い休日を、
    僕は久々にスタンダールを読みたくなりました。

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