鳥は何気なく後ろを振り返る事さえなく、
北北西へ羽根を羽ばたかせて行った。
タクシーは夜中の0:30を過ぎても来なかったけど
君が傍にいたから僕は充分だった。
路肩で君が見据えていたのは、今日の余韻だったはず。
僕は僕で次のプランをもう考えていたな。
流れ星なんて空を見上げても滅多に見つからないよ。
奇跡の数は数え切れないのに、僕等の目につくことは少ない。
ただあの夜は間違いなく、二人にとって一曲の歌のような、奇跡だった。
君はいつもの軽装で来て、格好つけた服の僕は拍子抜けしたんだけど、
今なら君の言葉の意味が分かる、理解したいんだ。
文学は人を惨めな境遇に置くから嫌いだって、その言葉。
現実の方が遥かに素晴らしい。
文学やアートなんて人生を補填するツールに過ぎない。
そいつらが僕等を拘束するなんておかしな話だ。
本末転倒だろ? 僕は今本気でそう思ってるんだ。
足りないお金を集めて何とか仕立てたパーティだったけど、
こんなに最高の夜はないじゃないか。
だって君は僕に見せたこともない失敗も、沢山見せてくれたからね。
零したアルコールの海に溺れて。
はしゃいで歌って満面の笑顔で夜が過ぎていく。
鳥たちが取った進路の行き先を、
もう僕等は知る必要もないし、追う必要もない。
僕たちがいるべき場所がどこか分かったから。
2024年3月の奇跡は、こうしてまた僕等を一つにするんだ。