人の夢

現実のような夢と夢のような現実の間で

プカリ、プカリ、チャポリ。

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人であろうとするなら、人ではない何かの中に入って、人を見つけることだよ。人ではない何かを慈しむことだよ。如来のように「まぁ、まだだよね。先は長いね」と言って、刀を抜かないことだよ。腹を立てないことだよ。人ではない何かに乱されないことだよ。彼らは人になれなかった過去を背負っているのだよ。その鎖の長さは、君の手の届く長さではないのだよ。人ではない何かに君を仕立て上げようとする力に流されずに、人ではない何かとの折り合わせ暮らすことだよ。今日もまた一人、どこかで食われたらしいが。ところで、

人ではない何かとは何かね。

人とは、何の比喩だね。何の比喩が、人なのかね。

人ではない何かに食われぬよう呪文を自分にかけることだよ。人の姿を保つお守りを君は持っているか。君を守るおまじないを持っているか。人であり続けるための儀式をしているか。君は、人であることは何をすることだと想像するんだい。君の持つ何某という名前は人ではない何かに呼ばれるためにあるとはいうまい。二足歩行をすれば人であるという神話を信じているのかね。知っているのかね。人という漢字は、ひざまずく奴隷の姿の形象だと(本当かしらん)。4本足の人。翼を持った人。地を這いずり回る人。燃え盛る人。ジッとして動かない人。頬を撫でて通り過ぎる人。太陽に手をかざし続ける人。君は人かね。何かね。鬼でも悪魔でもないとどうして言える。ところで、

君は、今、人であることを、望むがゆえに息を切らしていると、私は思うのだが。

さて、タワムレはこのくらいにして、先へ進みたまえ。

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人するという動詞を想像してみましょう。群れの構成員が150を超えてしまった時、私たちは人ではなくなったとしましょう。homoとはヒト族という意味があるようです。人の形をした、私たちは、一体何者でしょう?homoとは同一という意味もあるようです。私たちは、homoという幻想にかかっているようです。ところで、

あなたは、人であることを、望みますか?

さぁ、冒険に出かけましょう!

***

最初の村で出会ったものは、アタラクシア!と叫んでいた。

それは木の根元で吐いていた。うまく吐き出せていたのかしらん。

それは、いらないからと、魔法の本をくれた。

表紙には「でんでんむしのかなしみ」と書かれていた。

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大事な何かを失わないように結びつくのが人の人間としての姿であると想像してみよう。霊長類が群れとしてのパフォーマンスを最大限に発揮するためにグルーミングをしているとしたら。人が日々人らしい営みとして発揮するパフォーマンスとは何か、想像してみよう。人とそうでないものの分別を試みてみよう。僕は人を夢見る

プカリ、プカリ、チャポリ。

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カレーは、おいしいかい?

またこの家に戻ってこようね。

戻ってきた時、人の姿をしていようね。

ん?君は随分ぎこちなく笑うようになったね。

ところで、人ってなんなんだろうね。

ああ、そうだ、君はもう、食われてしまっていたのだったね。

僕は君と、まだこの営みを続けられるのかな。

僕はまだ、人の姿をしているかい?

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それはどこからか現れた。カレーが入った鍋からか。それとも家の外からか。それとも目の前の君からか。僕からか。いくつかの層をなす混沌(混沌に構造があるという考えが混沌である)という名がよく似合うテクスチャーが波打っている。変えようのない翻弄されるしかない大きな流れの上にさざなみが立つ。波が人の比喩なのか、人が波の比喩なのかわからない。四方から八方から人のような何かの、もしくは人の営んできたそれぞれの文脈が、営みが、物語がからみついてくる。ままならぬ折り合わぬ糸がより合わされるようなからまり合うようなもつれの中で、何かの比喩を営む何かが群れてうごめいている。こんがらがったまま流れこんでくる。また大きなもつれにからみとられる。そのけだまりが、重なりが、人の姿をして、近づいてくる。息がつまる。僕は魔法の本を開いた。文字列を唱えた。「    」。その魔法は僕を失望させた。別の文字列を唱えてみた。「    」。得意顔をした文字列たちは、僕を悲観させた。なんてこった。僕は呆気なくのみこまれたか、はきだされたか、つなぎとめられたか、たちきられた

(プカリ、プカリ、チャポリ。)

どうやら僕はバラバラになったらしい。スカスカだ。ギシギシと音が鳴る。僕は揺れていた。どうやら水面には、浮かんでこれたらしい。小舟からのリスタート。小舟は流され続けている。漕ぐための櫂(かい)は見あたらない。今、まさに、僕が僕に漕ぐことを要求している。気がする。浮かんでいるだけでもいいのだろうけれど。人の比喩などどうでもいい。自分の姿など知らなくてもいい。ただ強く漕ぐことを、僕は僕に要求している。めまいのような酔いを感じながら、僕は漕ぐという行為を強く思った。ゴトンと音がして、櫂が僕の脇腹に当たった

プカリ、プカリ、チャポリ。

***

夏が終わる。

少女の(と僕が勝手に想像した)魔法が、色彩を、一度だけ、小さく、遠くで、放った

プカリ、プカリ、チャポリ。

***

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