景色×速度= 


その答えがなんにせよ一定であるということをいつも私は忘れている。毎日、電車の窓に置き去りにしていく景色の奥で、冬の風に靡く草の長さが驚くほどに不揃いであることを忘れているし、名も知らぬ草が先端から土色に枯れつつ根元にはまだしっかりと緑を蓄えていることを忘れている。桜木に襲いかかった草は幹を登り膝丈ほど高さで往生し、その大木にぶつかった風が悲鳴をあげながらそばだてたジャージの襟に突撃をはじめる。


まばゆいとまぶしいは似ている
光を表現する言葉はこんなにも溢れているのに、朝の光と露に濡れるあの公園に佇むブランコの陰影に馴染む言葉が見つからない。通り過ぎようとしてふと蹴った小石が思ったよりも転がっていく。吐く息は白く、遠くに転がっていくほど影が引き伸ばされていく。スゥと吸い込んだ空気が喉の奥を小さく凍らせて、冷たさにすっと背筋が伸びて、


A Day In The Life が流れ始めて片耳のイヤホンが外れかける。何気なく見上げた空は氷の浮かぶ海のようにひっそりとして、どこもかしこもケーブルに区割りされている。あ でい いん ざ らいふ それがどういう意味なのかはわからない。背負ったギターの重みで少しだけ仰け反るからだを咄嗟に右足で支える。からだにほんの小さな電流が走る。ドーム一つほどの暗闇に一本の蝋燭が揺れるくらいの、ささやかな火のような。


朝が潮の香と混ざり始めて、日の始まりがうみねこたちと戯れいている。まだこの靴音が全部私のものであるうちに、凍りついた喉がゆっくりと溶けはじめるといい。波間では、誰のものとも知れない手袋が途方もなく行ったり来たりを繰り返している。私の声が羽の生えた蛇のように海岸沿いのこの道を行き去ってゆく。張り巡らされた見えない氷のベールを次々と割って、誰のものにもならないうちに、私の耳へと帰ってくる。









ぼざろが終わってしまった喪失感でファンアートならぬファンポエム書いてしまった。

ukari

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