友だちのユータくんが日本に帰国してしまった。ユータくんは同い年くらいの兄ちゃんで、アデレード出身の奥さんがいるので、永住権を取る関係でこっちに数年いたのである。彼はそれはそれはロン毛であり。入れ墨もたくさん入っていれば、ほとんど戦慄的なほどにいつも洒落た格好をしていた。日本ではずっと美容師をしていたのだ。
最初見かけたとき、こんなひとは絶対大麻吸うやろと思ったので、大麻吸うでしょ?友達になろうよ、と話しかけてそのまま友達になった。とにかく大麻を吸って、たまにキノコを食べたり、LSDをちょっぴりやったりしながら、ビートルズやジャズ、ときどきオアシスとかを聴き虚空を見つめる遊びや、スピリチュアルな話を教えてもらったり、どうやったら世界を革命できるかなどを話あったものだ。
なんでも知り合って最初のほうのころ、ユータくんはニヤニヤしながら、おれーまだ青春できると思うんですよねと言ってて僕はぶっ飛ばされたことがある。とにかく互いに三十路である。なのにまだそんなことを言ってニヤニヤしているのである。まじすごいなあと本当に感心してしまった。青春なんて言葉は忘れ去ってから何年も経っていた。
ユータくんは青春を延長して去った。ユータくんは日本でとりあえず陶器を学びあとは蛇使いになるための修行をするのである。これを読んでるひとは、まーまー正気をお疑いになるか、普通になにかの冗談だと思ってしまうかもしれないが、混じりっけなしの事実である。驚くべきひとというのはいるものだ。そういう人はまず人を笑わせてくれる。それから頼もしいような気にさせてくれる。そのままユータくんには人々を戦慄させつづけるような人であってほしい。というか、そんな祈りすらおこがましいほど、ユータくんはユータくんだろうことは俺の確信するところである。願わくばさらにひとびとを戦慄せしめよ。君のようなものは君いがいにない。