今夜、すべてのバーで

相も変わらず人びとの暮らす家々の戸口へ食料を運ぶ仕事をしている。まだ、道路を走っていてもほとんど同業者とすれ違うことのなかった一昨年と比べて事情は様変わりしてしまった。混雑する大通りから一つ入った生活道路で同業者とすれ違...

北風は吹雪くのをやめ、カシオペア輝いて

中学生の頃に好きだった音楽を高校になっても好きでいることはなんだかカッコ悪い気がしていた。そうして随分気取った音楽を聴いていた気がする。当時まだ編集長じゃなかった山崎洋一郎が雑誌「ロッキングオン」で推していたシガーロスを...

言語化にはパトスが無いよ

インターネットという、いわゆる『言葉の海』にどっぷり浸かってしまった私たちにとって、『言語化』はまるで神様のように見える。言語化はカッコいい。ぼんやりしていた感情や気持ちを、今存在する様々な言葉を使って、あるいは新たに言...

無職流:終わっていくラジオとの向き合い方

Creepy Nutsのオールナイトニッポンが終わるらしい。 「らしい」という書き方をしたのには理由がある。『Creepy Nutsがオールナイトニッポン卒業』というタイトルのニュースは見たし、佐久間宜行のオールナイトニ...

景色×速度= 

その答えがなんにせよ一定であるということをいつも私は忘れている。毎日、電車の窓に置き去りにしていく景色の奥で、冬の風に靡く草の長さが驚くほどに不揃いであることを忘れているし、名も知らぬ草が先端から土色に枯れつつ根元にはま...

短編小説:なにもないところ

──気付けば私は、真っ白な世界に立っていた。雪山だろうか、とも思ったが、気温は低くなく、秋と冬の境目のような心地よい気温だった。何度か足踏みをしてみる。地面は固く、さらさらしている。アスファルトのようにごつごつしているわ...

ゴミみたいな

https://www.lyricals.net 知人がやっているWebマガジンに群青ズンビィというとても粋なサイトがあって、先日僕のところに執筆依頼が来た。先日といってももう随分前の話になってしまったのは僕がそれを書き...

適当に生きて、何者でもない自分を守る

この世界で生きていく限りは、「ちゃんと生きなければいけない」のだ、と気付いたのは最近のことだ。ちゃんと、きちんと、ていねいに。適当に生きていることは、この世界で言う「生存」には当てはまらないのだろう。そう考えると納得がい...